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「量販の万能包丁」と「杉本の万能包丁」、その違いとは

前回に引き続き、今回は「万能包丁の誤った認識」についてお話をしたいのですが、その前に少し、日本の包丁に欠かせない「研ぎ」の工程についてご説明させてください。

プロの料理人は、「研ぎ」の工程をとても大切にされています。各々こだわりがあり、大切な包丁の「研ぎ」に向き合っていらっしゃいます。
なぜ、それほどまでに「研ぎ」が重要視されるのでしょうか。
それは、研ぐことで優れた切れ味が保たれ、それによって食材の味が左右されることを知っているからです。生の食材を活かす日本料理において、食材の味を変えるほどの力を持つ刃物の切れ味は、大変重要なもの。だからこそ、切れ味を保つための「研ぎ」の工程をおろそかにする料理人は一人たりとも居ないのです。

しかし、なぜ刃物の切れ味が、食材の味まで変えてしまうのでしょうか。
それは、丁寧に研ぎあげられた刃物を使うことにより、細胞を破壊することなく食材を切れるためです。それによって食材の鮮度が保たれ、変色も起こりにくく、苦味や雑味も出ず、より旨味が強く感じられます。
優れた切れ味を持つ刃物は、スパッと食材を切り、見た目の美しさを作り出しますが、実はそれだけでなく、食材そのものの味を大きく変えてしまう力が秘められているのです。

では改めまして、もうひとつの「万能包丁の誤った認識」についてお話をします。
現在、「研がなくていい包丁」が万能包丁と呼ばれ、量販店等で広く販売されています。でもこれは、本当に万能と言えるものなのでしょうか。そして本当に、研がなくても使い続けることができるのでしょうか。
「研がなくていい包丁」が生まれた背景には、クレームがありました。刃物屋ではない所で包丁が売られる場合、クレームに対応することができないという弱点を持ちます。それ故、できるだけクレームの出ない商品であって欲しいという思いがあり、切れ味を犠牲にしてでも破損し辛い製品である「研がなくていい包丁=万能包丁」が生まれました。
この包丁は、お手入れ不要です。欠けにくく、錆びず、研ぐ必要もありません。しかし、それと引き換えに切れ味は最低限となっています。でも、それでいいのです。というのも、しばらく使い、いよいよ切れなくなれば買い換えればいい……という使い方を良しとしている包丁なのですから。
そのような包丁に慣れた人が杉本の刃物を購入されると、「錆びてしまった」「欠けてしまった」「切れなくなった」などのお問い合わせが入ることがあります。詳細を伺うと、濡れたまま水切りカゴに入れっぱなしだったり、まな板を使用せずに食器や調理台の上でそのまま切っていたり、購入してから全く研いでいないと仰るのです。

万能包丁とは、本来「日本料理において、肉や野菜など様々な食材を切ることができる包丁」という意味です。
しかし今では、「お手入れ不要の包丁」という認識の方が多くなってしまっているように感じます。

日本の刃物の文化を知らないのは、もはや海外の方だけではないのだという事実。
日本人であっても、優れた日本の刃物はお手入れをし、研いで使っていくのだということを知る人は、どんどん少なくなっているのでしょう。
杉本は、日本の刃物を販売する者として、販売後のお手入れについても発信していかなければならないという使命を感じています。

本物の包丁には、「研ぎ」が必要です。
それにより、量販の包丁とは一線を画する優れた切れ味を発揮します。
そしてその切れ味が、日々の料理の味に大きな変化を生み出します。
杉本の刃物は、お手入れなしで使うことはできません。
お手入れをすることで完成形となる、日本古来の本当の刃物です。
その技術をしっかりと受け継ぎ、頑なに守り続ける素晴らしい刃物の本来の在り方を、広く知っていただきたいと思っています。

「万能包丁」の『万能』の意味、お分かりいただけたでしょうか。
牛刀と三徳包丁が万能の力を発揮できるのは、日本のスーパーで販売される食材において言えることであり、あらゆる食材や調理法、そのすべてに共通する訳ではありません。
また、お手入れが不要なことを、万能と呼んでいるのでもありません。

包丁は、料理に欠かすことのできない道具であり、世界で必要とされる調理器具のひとつ。

使い方をわざわざ考える機会もないほど身近な存在です。

しかし、だからこそ、日本古来の包丁製造技術を継承するメーカーとして,正確な情報を発信し、包丁に対する知識と見識を、国内だけでなく世界の人々にも共有してもらえるよう、働きかけていかなければならないと考えます。

世界にはあらゆる食材があり、国ごとに魅力的な食文化を作り出しています。その際に必要となる包丁は、使いやすく、調理を的確にサポートできるものでなくてはなりません。
名称で判断するのではなく、食材と調理法に合わせ、包丁を性能や形、サイズで見極め、正しい選択をしていくことが大切です。

日本には「万能包丁」の他、用途に合わせた様々な包丁が揃います。貴方にとって本当に必要な包丁はどれなのか、それを選ぶお手伝いを、ぜひ弊社にさせて頂ければと思います。